【事例でわかる】公正証書遺言があれば本当に安心?20年前の遺言書が原因で相続手続きがストップした理由と対策

行政書士・FP(ファイナンシャルプランナー)の相澤和久です。

今回は、私が実際に担当した相続手続きの事例をご紹介します。「うちは公証役場でしっかり『公正証書遺言』を作ってもらったから、絶対に安心だ」と思っていませんか?

実は、どれほど確実と言われる遺言書であっても、作成してから年月が経ち、家族の状況が変わることで、いざという時に「そのままでは手続きができないお守り」になってしまうケースが少なくありません。

もし大切なご家族が慣れない法律の手続きで困らないために、何に気をつけるべきだったのか。横浜市中区で多くの不動産・相続相談に携わってきた専門家の視点から、分かりやすく解説します。

目次

20年前に作った「公正証書遺言」が、なぜ使えなくなったのか?

今回の事例は、ご兄弟の間で起きた相続(兄弟姉妹相続)です。 亡くなった二男のAさんは、都内で一人暮らしをされていました。配偶者やお子様はおらず、突然の訃報に、ご遺族のみなさまは大変驚かれたそうです。

その後、長女のBさんが遺品を整理していたところ、20年近く前に作られた「公正証書遺言」が見つかりました。

遺言書の内容
  • 不動産: 長男(Dさん)に相続させる。もし長男が先に亡くなっていたら、長男の妻(Eさん)、甥(Fさん)、甥(Gさん)に3分の1ずつ分ける。
  • 不動産以外の財産(預貯金など): 長女(Bさん)、二女(Cさん)、長男(Dさん)で3分の1ずつ分ける。
  • 遺言の実行役(遺言執行者): 長男(Dさん)を指定する

一見、とても細かく丁寧に書かれているように見えます。しかし、ここに大きな落とし穴がありました。遺言書に指定されていた長男(Dさん)は、すでに数年前に亡くなっていたのです。

今回の相続関係図(4人の相続人)

Bさん(長女:法定相続分 6分の2)

Cさん(二女:法定相続分 6分の2)

Fさん(亡くなった長男の子・甥:法定相続分 6分の1)

Gさん(亡くなった長男の子・甥:法定相続分 6分の1)

※長男の妻(Eさん)は法律上の相続人ではありません。

幸いにも残されたご親族のみなさまはとても仲が良く、「不動産は長男の家族に譲り、その他はみんなで均等に分けよう」という亡きAさんの想いに全員が賛成していました。しかし、「遺言書の指定人が先に亡くなっている」という事実だけで、手続きの難易度は跳ね上がってしまいます。

解決への道:提案した2つの選択肢

私は受任にあたり、この状況を解決するために2つのルートをご提案しました。それぞれの特徴を分かりやすく表にまとめました。

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選択肢メリットデメリット・注意点
① 遺言書をベースに進める亡くなったAさんの遺言通りの割合で分けられる・家庭裁判所へ「実行役(遺言執行者)」の選任申し立てが必要(数ヶ月かかる)

・浮いてしまった「長男の取り分(3分の1)」について、結局話し合い(遺産分割協議書)が必要。
② 全員の話し合い(遺産分割協議)で進める裁判所を通さないため、手続きの時間を大幅に短縮できる・相続人ではない人(長男の妻Eさん)が含まれているため、そのままでは話し合いの書類が作れない。

ご親族で話し合われた結果、今回は時間と費用を抑えられる「② 全員の話し合い(遺産分割協議書を作成する)」のルートを選ぶことになりました。

解決までの3ステップ

裁判所を使わずに手続きを進めるため、以下のようなステップで進めました。

STEP
長男の妻(Eさん)による「遺言の権利放棄」

遺言書では相続人ではないEさんに不動産を譲る(遺贈)となっていました。Eさんご自身も「自分の子供たち(Fさん、Gさん)に引き継がせたい」と希望されていたため、まずはEさんに「私は遺言の権利を受け取りません」という書面を書いていただきました。

STEP
相続人全員での「遺産分割協議書」の作成

Eさんが権利を放棄したことで、財産はすべて本来の相続人(Bさん、Cさん、Fさん、Gさん)のものとなります。改めて全員で「不動産はFさんとGさんが半分ずつ、預貯金はみんなで分ける」という内容の書類(遺産分割協議書)を作成し、実印を押印しました。

STEP
不動産の名義変更・銀行口座の解約手続き

完成した書類をもとに、法務局での不動産の名義変更(相続登記)や、金融機関の解約手続きをスムーズに完了させることができました。

専門家からのアドバイス:こうすれば困らなかった!

今回のトラブルを防ぐための最大のポイントは、「遺言書は定期的な見直しが必要」ということです。

遺言書は一度作ったら終わりではありません「家族の誰かが先に亡くなった」「新しい財産が増えた・減った」など、状況が変わった時には必ず中身を書き直す、または見直す必要があります。

特に、不動産会社から「遺言書があるから大丈夫ですよ」と言われて安心しているケースをよく見かけますが、不動産のプロであっても法律や相続の細かい実務まで見越したアドバイスをしてくれるとは限りません。

相続のセカンドオピニオン:よくある3つの疑問

公正証書遺言があれば、専門家に頼まなくても自分たちで手続きできますか?

遺言書の内容と現在の家族状況が完全に一致していれば可能です。しかし、今回のように「記載されている人が先に亡くなっている」などのズレがある場合、銀行や法務局から受け付けを拒否されるケースが多いため、専門家へ相談することをお勧めします。

不動産会社に相続登記や遺産の相談をしても大丈夫でしょうか?

不動産会社は「売却や購入」のプロですが、法律の専門家ではありません。会社によっては提携先の司法書士を紹介してくれるだけの場合もあります。中立な立場で、不動産と法律・税金の両面からアドバイスをくれる「セカンドオピニオン」を持つと安心です。

横浜市中区在住ですが、遠方の不動産や実家の相続でも相談に乗ってもらえますか?

はい、喜んで承ります。当事務所は横浜市中区にございますが、全国の不動産や預貯金の相続手続きに対応可能です。まずは地元の話しやすい専門家として、お気軽にご活用ください。

結びに:あなたの遺言書は「今」の家族に合っていますか?

どんなに立派な公正証書遺言があっても、時間が経てば家族の形は変わります。そのまま放置してしまうと、残された大切なご家族が、戸籍集めや裁判所への手続きで何ヶ月も苦しむことになってしまいます。

特に、不動産が絡む相続は時間が経つほど関係者が増え、トラブルに発展しやすくなります。あの時、見直しておけばよかった」と後悔する前に、まずは一度、専門家にその遺言書を見せてください。

当事務所では、難しい法律用語を使わず、あなたのご家族に寄り添った最適なアドバイスをいたします。不動産会社に言われた手続きに少しでも不安を感じたら、まずは無料相談へお越しください。

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