行政書士の相澤和久です。
前回(第1回)は、相続手続きの全体像と「期限」の重要性についてお伝えしました。

一般的に相続というと、「まずは戸籍を集めて、家族で話し合い(遺産分割協議)をすること」だと思われがちです。
しかし、実はその前に「絶対にやってはいけないこと」と、「真っ先に確認すべきこと」があります。
それが、故人が「遺言書」を遺していたかどうかの確認です。
なぜなら、遺言書の有無によって、その後の手続きや「誰が財産をもらえるか」が根本からひっくり返ってしまう可能性があるからです。
そこで第2回は、
「遺言書を見つけたけれど、どうすればいい?」「どこを探せば見つかる?」といった疑問から、うっかりやってしまいがちなNG行動まで、初めての方にも分かりやすくお伝えします。
スムーズな相続への第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
遺言書の確認が必要な理由|家族の話し合いが無駄になることも?
相続が発生した際、私たち専門家が真っ先に行うのは「相続人の確定(誰が引き継ぐ権利があるか)」の調査です。
「それは戸籍を調べれば済む話では?」と思われるかもしれません。
しかし、現実はそう単純ではないのです。
たとえ戸籍上の相続人が揃っていても、「遺言書」が一つ出てくるだけで、その前提がすべて覆る可能性があるからです。
相続には「絶対的な優先順位」がある
日本の法律では、財産をどう分けるかについて明確な順番が決められています。
- 【最優先】遺言書がある場合:遺言書の内容に従う
- 【次点】遺言書がない場合:法律で決まった人(法定相続人)で話し合う(遺産分割協議)
つまり、遺言書は「法定相続人による話し合い」よりも強力な力を持っています。
「後出し」の遺言書が招く最悪のトラブル
もし遺言書の確認を後回しにして、家族でせっかく話し合いをまとめ、遺産分割協議書まで作成したとしましょう。
その後に「実は遺言書があった」と判明した場合、それまでの話し合いや苦労はすべて白紙(無効)になってしまいます。
極端な例では、「相続人以外の人(友人や団体など)にすべての財産を譲る」と書かれていれば、家族の話し合いそのものが意味をなさなくなることさえあり得るのです。
遺言書の種類と「探し方」|どこに保管されている?
遺言書にはいくつか種類がありますが、実務で目にするのは主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。
それぞれ探し方や注意点が全く異なります。
① 自筆証書遺言(自分で書いた遺言)
故人が手書きで作成したものです。もっとも身近なものですが、「見つけにくい」、「内容が分かりづらい」のが最大の難点です。
- 探すべき場所:
- 自宅の金庫、仏壇、机の引き出し、本棚の隙間
- お世話になっていた専門家に預けていないか
- 注意点: 気軽に作れる反面、内容に不備があって「無効」になってしまうケースや、内容の解釈が難しいケースも多々あります。死後に発見されず、家族の話し合いが終わった後にひょっこり出てくる……といったトラブルが絶えません。
【新制度】法務局に預けているケース(自筆証書遺言保管制度)
もし自宅で「保管証」という書類を見つけた場合、馬車道駅近くの横浜地方法務局で保管の有無を照会しましょう。(遺言書保管事実証明書の請求)。
② 公正証書遺言(公証役場で作った遺言)
公証役場で作成された、もっとも確実な遺言書です。
- 探すべき場所:
- 自宅に「正本」や「謄本」と書かれた茶封筒がないか
- 見当たらない場合の探し方:
- 全国の公証役場にある「遺言検索システム」で、遺言があるかどうかを調べられます。
- メリット: プロが関与して作成されているため、不備で無効になるリスクが極めて低く、原本が役場に保管されているため紛失の心配もありません。
【専門家からのアドバイス】どちらも「書類の準備」が壁になります
法務局や公証役場へ照会に行けば、遺言書の有無は判明します。しかし、これらを確認するためには、「故人の死亡がわかる戸籍」や「相続人であることを証明する書類」を揃えて持参しなければなりません。
「自分で動く時間がない」「どんな書類を集めればいいか分からない」という方は、この調査段階から専門家へ依頼することで、無駄な手間を省き、正確に調査を進めることができます。
自筆証書遺言を見つけたら「開封厳禁」!家庭裁判所での検認とは
もし自宅で「遺言書」と書かれた封筒を見つけても、絶対にその場で開けてはいけません。
自筆の遺言書を発見した場合は、家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きを受ける義務があるからです。
検認が必要な理由と「開封NG」のルール
検認とは、相続人の立ち会いのもとで遺言書を開封し、内容や状態を確認するための手続きです。
- 絶対に開けない: 封印のある遺言書を勝手に開けると、過料(罰金)に処される可能性があります。
- 現状のまま保管: 「内容を知りたいから」と勝手に開けるのではなく、まずはそのままの状態で保管してください。
- 例外: 封がされていない(糊付けされていない)場合は、中身を確認しても「開封」にはあたりません。以前私が担当した案件でも、封が開いていたため事前に内容を確認し、スムーズに方針を立てられたことがありました。
検認手続きの流れと期間
手続きは、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。 (例:横浜市中区で亡くなられた場合は、JR石川町駅近くの横浜家庭裁判所となります)
- 申立て: 裁判所に申立書と「大量の戸籍書類」を提出します。
- 通知: 裁判所から全相続人へ、検認を行う日の連絡がいきます。
- 当日: 申立人が遺言書を持参し、出席者全員で内容を確認します。その場で「検認済証明書」が発行され、これでようやく銀行などの手続きに使えるようになります。
申立てから検認当日までは、通常 1ヶ月程度 かかります。この間は手続きがストップしてしまうため、早めの準備が欠かせません。
検認が「不要」なケース
以下の遺言書については、すでに公的な機関が関与しているため、検認の手続きなしですぐに相続手続きに使えます。
- 公正証書遺言
- 法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言
その遺言書は「有効」ですか?必ずチェックすべき4つの形式
家庭裁判所での「検認」は、あくまで遺言書の存在を確認する手続きであり、「その遺言書が法的に有効かどうか」までを判断してくれるわけではありません。
せっかく見つけた遺言書も、法律で定められた厳格なルール(形式)から外れていると、残念ながら「無効」になってしまいます。
まずは以下の4点をセルフチェックしてみてください。
① 全文が「自筆(手書き)」であるか
もっとも多いミスがパソコン作成です。財産目録(リスト)以外は、すべて本人の手書きである必要があります。代筆やパソコンで打った遺言書は原則として無効です。
② 「正確な日付」が記載されているか
「2026年5月吉日」のような曖昧な書き方はNGです。「2026年5月5日」と特定できる日付が必要です。
③ 署名と「捺印」があるか
本人の署名はもちろん、押印も必須です。実印が望ましいですが、認印でも法律上は有効とされています。
④ 遺言者が「一人」で作成しているか
仲の良いご夫婦でも、一つの紙に連名で書いた遺言(共同遺言)は無効になります。一人一枚、別々に作成しなければなりません。
「無効」ではないけれど……「争い」を生む遺言書にご注意を
形式は整っていても、内容が曖昧なためにトラブルになるケースも後を絶ちません。
- 「長男に多めに譲る」→(具体的にどれくらい?)
- 「自宅は妻に任せる」→(相続させるのか、住む権利を与えるだけか?)
このように、解釈が分かれる表現があると、せっかくの遺言書がかえって家族の仲を裂く「争いの種」になってしまうこともあります。
【行政書士相澤和久からのアドバイス】
検認が終わった後、「この内容で本当に銀行や名義変更の手続きが進められるのか?」と不安に思われたら、早めにご相談ください。形式の不備だけでなく、後々のトラブル(遺留分など)のリスクも踏まえた診断をさせていただきます。
遺言書の確認後にすべきこと|「遺言執行者」の有無がカギ
遺言書の内容を確認したら、次はいよいよ「財産の名義変更(執行)」に移ります。
ここで重要になるのが、「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」が指定されているかどうかです。
遺言執行者とは?
遺言の内容を具体的に実現する「責任者」のことです。預金の解約や不動産の名義変更など、煩雑な手続きを単独で行う権利を持っています。
- 指定がある場合: その人が中心となって進めます。もし専門家(弁護士や行政書士など)が指定されていれば、相続人の皆さまの手間は大幅に軽減されます。
- 指定がない場合: 相続人全員が協力して手続きを行う必要があります。例えば、銀行の解約一つとっても「相続人全員の署名・捺印・印鑑証明」を求められることが多く、想像以上に時間と労力がかかります。
「遺言書があれば話し合いは不要」とは限らない?
「遺言書があるから、もう家族で集まる必要はない」と思われがちですが、実は以下のようなケースでは改めて家族の話し合い(遺産分割協議)が必要になります。
- 遺言書に記載されていない財産(後から見つかった預金など)がある
- 遺言で財産をもらうはずの人が、先に亡くなっていた
- 遺言の内容が「全財産の3分の1を長男に」といった割合指定(包括遺贈)である
後悔しないためのトラブル防止ポイント
遺言書は故人の最後のメッセージですが、内容によっては残された家族の仲にヒビが入ってしまうこともあります。
トラブルを未然に防ぐために、以下の3点に注意してください。
- 相続人全員への丁寧な共有:一人の相続人が勝手に手続きを進めると、他の親族から不信感を抱かれます。
遺言書の内容を透明性を持って共有することが、円満な相続のコツです。 - 「遺留分(いりゅうぶん)」への配慮:相続人には、法律で保障された「最低限の取り分(遺留分)」があります。
これを無視した内容だと、後から「お金を返してほしい」という請求(遺留分侵害額請求)が起こるリスクがあります。 - 曖昧なケースは無理をしない:遺言の内容が曖昧な場合、無理に進めると銀行で手続きを拒否されたり、法的に無効になったりします。
少しでも不安を感じたら、一度専門家の目を通すのが、結果として最も安く、早く解決する道です。
まとめ:遺言書は「見つけること」がゴールではありません
第2回では、相続の優先順位を決定づける「遺言書の確認」について解説しました。
3ヶ月、10ヶ月という厳しい期限がある中で、遺言書の有無を正しく把握し、検認などの法的ルールを守ることは、スムーズな相続において避けては通れないステップです。
最後にお伝えしたいのは、遺言書を確認した「その先」が本当の本番であるということです。
- せっかく見つけた遺言書を、手続きで「無効」にされないために。
- 大切な家族の間で、遺言をきっかけとした「争い」を起こさないために。
- 煩雑な書類集めとやり取りで、皆さまの貴重な時間を奪われないために。
相続は、ひとつとして同じケースはありません。インターネットの情報だけでは判断しきれない「我が家の場合の正解」が必ずあります。
一人で悩まず、プロの知恵を活用してください
「こんな初歩的なことを聞いてもいいのかな?」「遺言書らしきものがあるけれど、これって本物?」といった段階でのご相談が、実は一番トラブルを防げます。
行政書士相澤和久事務所では、皆さまの状況に合わせた最適な進め方をアドバイスさせていただきます。 まずは「何から始めればいい?」という一言だけでも大丈夫です。お電話やお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。
あなたの「安心」を、私たちが全力でサポートいたします。


