実例:60代女性が「安心」を手に入れた解決策
身寄りのない方の自宅がたどる運命
放置された空き家が近隣に与える「嫌な思い」
行政書士・相澤和久です。
「自分が死んだ後、この家はどうなるんだろう?」 おひとり様にとって、最大の資産であり、同時に最大の懸念材料が「自宅」です。
もし、あなたが何の対策もせずに亡くなった場合、その大切な家は「国庫」に帰属するか、あるいは「所有者不明の空き家」として放置され、近隣に迷惑をかける廃墟へと変わる可能性があります。
今回は、おひとり様の不動産がたどる法的ルートと、愛着ある家を「社会の資源」として活かすための知恵を解説します。
【実務の現場から】「もしも」を「安心」に変えた60代女性の決断
行政書士相澤和久「先日、こんな切実なご相談をいただきました。」
Aさん(60代女性)の事例をご紹介します。 Aさんはご主人に先立たれ、お子様もおらず、現在はご自宅で一人暮らし。 「いつまで元気にこの家で過ごせるか不安。もしもの時は家を売って施設に入りたいけれど、その準備を元気なうちに済ませたい」という切実な思いをお持ちでした。 そこで、私は行政書士・FPとして以下の「和の解決策」を提案し、実行しました。
- 身元保証の確保:近くにお住まいで交流のある「ご主人のご兄弟」に、将来の身元保証人になっていただくことを調整。
- 遺言書の作成:ご親族への感謝を込め、最終的には自宅をそのご兄弟に譲るという内容の遺言書を作成。
- 出口戦略の明確化:施設入居時の売却手順をあらかじめ整理。
「これで、最後までこの家で安心して過ごせます」 そう言って微笑んだAさんの表情が、今も忘れられません。
相続人がいない家は、最終的に「国のもの」へ
法定相続人が一人もいない場合、申し立てがあれば家庭裁判所によって「相続財産清算人」が選任されます。
その後、家や財産は整理され、借金などを清算した後の残りはすべて国庫に入ります。
「国に寄付するならいいじゃないか」と思うかもしれませんが、その手続きには多大な時間と費用(予納金など)がかかり、関係者が申し立てをしなければそのまま放置されます。
その間、家はメンテナンスされずに荒れ果てていくのが現実です。
誰かが申し立てをしてくれるはず、というのは甘い考えです。
「空き家」が親族や近隣に与える「嫌な思い」
疎遠な親族がいる場合、さらに事態は複雑です。
「関わりたくない」と放置されれば、庭の木は伸び放題、壁は崩れ、特定空き家に指定されれば固定資産税は跳ね上がります。
あなたの愛した場所が、誰かの「重荷」や「厄介者」になってしまう……。これはあまりに悲しい結末です。
【行政書士相澤和久事務所流】家を「和」の心で繋ぐ2つの提案
実務家として、私は以下の対策を強くお勧めします。
- 遺言による「遺贈」:お世話になった個人や、応援したい団体(NPO等)に家を譲る。もしくは死後換価してお金を譲る。
- 死後事務委任契約との併用:家財道具の片付け(遺品整理)までセットで委任し、スムーズに次へ繋ぐ。
結びに:家の最期を決めるのは、あなたの責任
「和をもって貴しとなす」という言葉は、自分の死後、周囲に波風を立てない準備をすることにも通じます。
家は、あなたが人生を刻んできた大切な場所です。それを「負の遺産」にしないために、今できることから始めましょう。
よくあるご質問(Q&A)
- 法定相続人がいない場合、遺言書を書かないと家は自動的に国へ行くのですか?
-
はい。相続人が誰もいない場合、最終的には国庫に帰属します。ただし、その前に「相続財産清算人」を選任するなどの複雑な法的手続きが必要で、その間の維持管理費用も発生します。お世話になった方や特定の団体に譲りたい場合は、遺言書で「遺贈」の意思を示す必要があります。
- 自宅を「寄付」したいのですが、断られることもあると聞きました。
-
残念ながら、不動産の寄付は自治体やNPOから断られるケースが多々あります。管理コストや固定資産税の負担が大きいためです。そのため「家を売却して現金化してから寄付する」という「清算型遺贈」の準備をしておくのが実務家としての賢い選択です。
- 今は元気ですが、将来施設に入る時の「身元保証人」がいません。どうすればいいですか?
-
頼れる親族がいない場合でも、行政書士などの専門家と「死後事務委任契約」や「身元保証」に関する契約を結ぶことで対応可能です。今回ご紹介した事例のように、まずは現状の資産と親族関係を整理し、どこまでを誰に託すかを早めに決めておくことが最大の安心に繋がります。









