中古マンションの火災保険「評価額」はなぜ低い?実際の売買価格との違いと損をしない「範囲」の境界線

こんにちは。行政書士・FP(ファイナンシャルプランナー)の相澤和久です。

50代、60代、70代と年齢を重ね、これからの暮らしやすさを考えて中古マンションの売却、または購入を検討される方が増えています。

「いくらで取引されるのか」「保険はいくらかかるのか」は、非常に気になるポイントですよね。

しかし、実際に契約するマンションの「売買価格(購入・売却価格)」と、保険会社が提示する火災保険の「評価額」を比べて、「あれ? 保険の評価額の方が、実際の売買価格よりずいぶん安いな……。もし今火事になったら、同じグレードの部屋を買い直せないんじゃないか?」と、不安に感じたことはありませんか?

実は、火災保険の金額が実際の売買価格より低くなるのには、マンション特有の明確な理由があります。そしてそれを知らないと、「余計な保険料を払いすぎてしまう」または「万が一のときに必要な補償が下りない」という失敗に繋がってしまいます。

これからの人生を過ごす大切な資産。損をせず、かつ万が一のときも安心できる「火災保険の境界線」を、行政書士とFPの2つの視点から分かりやすく解説します。

目次

なぜ差が出る?「実際の売買価格」と「火災保険」の決定的な違い

まず、最も基本となるのが「土地と建物」の切り分けです。あなたが実際に支払う(または受け取る)売買価格と、火災保険の評価額では、計算に含まれている対象が全く異なります。

ここが違う!2つの価値
  • 実際の売買価格(購入・売却価格) 「土地(敷地利用権)+建物」の価値です。立地が良い(駅近など)物件ほど土地の価値が高くなり、実際の売買価格も跳ね上がります。
  • 火災保険評価額 「建物のみ」の価値です。万が一火事になっても、そのマンションが建っている「土地」自体は燃えてなくならないため、火災保険の金額からは完全に除外されます。

特に便利な立地にあるマンションほど、売買価格に占める「土地の価値」の割合が大きいため、実際の売買価格と保険の評価額に大きなギャップが生まれるのです。

建物の中でもさらに絞られる!「共用部分」と「専有部分」の境界線

「土地が含まれないから安くなるのは分かったけれど、建物だけの価値にしても、まだ保険の評価額が安すぎる気がする……」

そう思われた方は、非常に鋭いです。ここにマンション特有の2の理由、すなわち建物における「共用部分(みんなのもの)」と「専有部分(個人のもの)」の切り分けがあります。

実は、あなたが個人で加入する火災保険の対象は、マンションの建物全体ではなく、「あなたのお部屋の内側(専有部分)」だけなのです。

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建物の区分具体的にどこを指すか?誰が火災保険をかけるか?
共用部分コンクリートの骨組み(躯体)、外壁、エントランス、エレベーター、バルコニーなどマンションの管理組合が一括して保険をかける
専有部分あなたのお部屋の内側の空間(内装、壁紙、床材、キッチンやユニットバスなどの設備)部屋の所有者(あなた)が個人で保険をかける

勘違いしやすいポイント! マンションの「コンクリートの壁や柱」そのものは共用部分であり、管理組合の保険の対象です。あなたが個人で加入する火災保険は、あくまで「その壁の内側の内装や設備(専有部分)」を元通りにするための金額で計算されます。

そのため、実際の売買価格に対して、個人でかける火災保険の評価額は、驚くほど低くなるのが正常なのです。

マンションの「専有部分(自己責任)」の境界線で、火災保険と同じくらい揉め事になりやすいのが「床下の排水管から起きた水漏れトラブル」です。万が一のときに「誰が修理費用を払うのか」の境目を以下の記事で分かりやすく解説していますので、購入前に必ずあわせてご確認ください。

知っておきたい契約の罠!マンションの面積にある「公簿」と「壁芯」

火災保険の手続きを進める際、もう一つ注意しなければならない重要なポイントがあります。それが、マンションの面積には「公簿(こうぼ)面積」と「壁芯(へきしん・かべしん)面積」という、2つの異なる測り方がある点です。

2つの面積の違い
  • 壁芯面積 壁の厚みの「中心」から測った面積です。不動産会社のチラシやパンフレット(間取り図)に記載されているのは、基本的にこちらの広い面積です。
  • 公簿面積 壁の「内側の線」だけで測った面積(内法・うちのり面積)です。法務局に登録されている公式な面積で、チラシの面積よりも少し狭くなります。

ここに注意! 火災保険を契約する際、保険会社から「お部屋の面積(専有面積)を入力してください」と求められます。このとき、どちらの面積を使って契約するかは、保険会社や構造の基準(上塗基準など)によって異なります。

正しい「範囲」を知って損をしないためのチェック手順

火災保険の正しい仕組み(土地は含まない、対象は専有部分のみ、面積の確認が必要)を理解できたら、以下のステップで損のない契約内容になっているか確認しましょう。

STEP
売買契約書や登記簿謄本を確認する

購入・売却するマンションの「公簿面積」と「壁芯面積」の両方を手元に用意します。

STEP
管理組合の保険範囲(管理規約)を確認する

マンションごとに、どこまでが共用部分で、どこからが専有部分(保険の対象)になるかの細かいルールが管理規約に定められています。

STEP
適切な保険金額を設定する

プロのFPを交え、あなたのお部屋の「専有部分」と「正しい面積」に見合った適正な金額を設定しましょう。

これからの暮らしとお金に関するよくある質問(Q&A)

バルコニー(ベランダ)で火災や台風の被害が出た場合、個人の火災保険で直せますか?

いいえ、原則として直せません。バルコニーはあなた専用のスペースに見えますが、マンション全体の避難経路でもあるため「共用部分(専用使用権つき)」という扱いになります。そのため、バルコニーの破損は管理組合が加入している火災保険の対象となります。

火災保険の申込書を書くとき、手元のパンフレットの面積(壁芯)をそのまま書いても大丈夫ですか?

保険会社や契約プランによって指定が異なります。「登記簿(公簿)の面積」を基準とする保険会社が多いため、自己判断で記入せず、必ず事前に確認が必要です。面積のわずかな違いが、将来の保険金支払い時に揉める原因になってしまいます。

今持っているマンションを売却する場合、火災保険はいつ解約すれば良いですか?

お部屋の引き渡し(カギの受け渡し)が完了するまでは絶対に解約してはいけません。万が一、売買契約から引き渡しまでの間に火事があった場合、引き渡しができなくなるだけでなく、あなたに専有部分の復旧責任が残るためです。引き渡しが無事に終わった当日に解約手続きを行いましょう。

結びに::後悔しない住み替えのために、早めのトータル相談を

今回のポイントを振り返ってみましょう。

  • 火災保険の評価額には「土地」の価値は一切含まれない(建物のみ)。
  • 個人で加入する火災保険の対象は、建物全体ではなく「専有部分(部屋の内側)」だけ。
  • マンションの面積には「公簿」と「壁芯」があり、火災保険の契約時には正しい確認が必要。
  • 実際の売買価格に惑わされず、正しい「範囲と面積」に応じた適正な保険金額を設定することが無駄を省くコツ。

住まい探しとお金の手続きには「タイムリミット」があります

これからの住まい選びや、適切な保険への加入、大切な資産の整理には、実は隠れた「時間の制限(緊急性)」があります。

万が一、将来的に認知症などで判断能力が低下してしまうと、「火災保険の正しい契約や見直し」「不動産の売却契約」「定期預金の解約」といった法律行為やお金の手続きが、ご自身の意思で自由にできなくなってしまう(資産凍結リスク)のです。

「まだ元気だから大丈夫」と思っている今こそ、これからの人生を安心して、損をせず、健やかに過ごすための住まいとお金の基盤を整える絶好のタイミングです。

当事務所では、行政書士としての「法務(登記簿の確認やトラブルのない契約)」と、FPとしての「財務(火災保険の適正化やライフプラン)」の両面から、あなたの住まいと資産のトータルサポートを行います。

「検討している物件の保険範囲や面積を見てほしい」「無駄のない火災保険の選び方を相談したい」という方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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