「やっとの思いで見つけた理想のマイホーム。誰よりも早く、一番に『買付証明書』を出した。それなのに、なぜか後から来た人に決まってしまった……」
不動産探しをしていると、このような信じられないような悲劇が、実は日常茶飯事のように起こっています。
横浜市中区で、相続・不動産法務を専門とする行政書士の相澤和久です。私の座右の銘は「和をもって貴しとなす」。
不動産取引において、売主様と買主様が笑顔で握手し、新しい生活へ向けて円満な縁を結ぶことこそが、私の理想とする形です。
しかし、不動産業界の現場では、この「和」が、業者側の「お金の力学」によって無惨にも踏みにじられる瞬間があります。
今回は、仲介業者が口が裂けても言わない「両手・片手」の損得勘定を暴きます。
そもそも「優先順位」に法的ルールはない
まず、大前提として知っておいていただきたい衝撃の事実があります。
それは、「一番に申し込んだ人を優先しなければならない」という法律や公的なルールは存在しないということです。
「購入申込書(買付)」は、あくまで「私はこの条件で買いたい」という意思表示の書面に過ぎず、法的拘束力はありません。
そのため、誰を契約の相手に選ぶかは、最終的には「売主様の自由」なのです。
しかし、実際には売主様が直接判断しているわけではありません。売主様に情報を届け、アドバイスをする「仲介業者」の存在があります。
この仲介業者の立ち位置によって、あなたの優先順位は、知らない間に操作されているのです。
優先順位を支配する「物元」と「客付け」の力学
不動産業界には、大きく分けて二種類の業者が存在します。
- 物元(ぶつもと)業者(または元付業者・もとづけ):売主様から直接、売却の依頼を受けている業者。いわば「物件の窓口」です。
- 客付け(きゃくづけ)業者:買主様を連れてくる業者。あなたがポータルサイト等を見て問い合わせた業者がこれに当たることが多いです。
この二者の関係性が、優先順位を左右する「ドロドロの正体」である「両手」と「片手」という報酬構造を生み出します。


「片手」と「両手」――数百万円の差が正義を狂わせる
仲介手数料の計算式を思い出してください。
仲介手数料=(売買価格×3%+6万)+消費税
もしあなたが他社(客付け業者)を通じて申し込んだ場合、窓口である物元業者は、売主様からしか手数料をもらえません。
これが「片手(分かれ)」です。
しかし、もし物元業者が「自社で見つけてきた客」と契約させることができれば、売主と買主の両方から手数料が入ります。
これが「両手」です。
売買価格が5,000万円であれば、片手なら約170万円の報酬ですが、両手なら2倍の約340万円になります。
この「170万円の差」が、目の前の一番手(あなた)を無視してでも、二番手の自社客を優先させようとする強烈な動機(エゴ)となるのです。
実録:一番手を「潰す」ための物元業者の巧妙な手口
両手の利益を狙う物元業者は、他社からの「一番手」を排除するために、以下のような工作を平然と行うことがあります。
① 「囲い込み」による情報遮断
他社の営業マンが「一番手で申し込みたい」と連絡しても、「今、別の方と商談中でして…」と嘘をついて受け付けない、あるいは「売主様が旅行中で連絡がつきません」と数日間の時間稼ぎをします。
その間に、必死で自社の客を探し、二番手を「自社客の一番手」として仕立て上げるのです。
② 売主への「ネガティブ・キャンペーン」
一番手のあなたが他社客である場合、物元業者は売主様に対し、「この一番手の方は、住宅ローンの審査が通るか非常に怪しいです」「属性があまり良くないようです」と根拠のない不安を植え付けます。
一方で、自社の客(二番手)については「この方は上場企業にお勤めで、現金も豊富。こちらの方と契約した方が安心ですよ」と露骨に誘導します。
③ 「買付の蒸発」
他社が送った買付証明書を、物元業者が売主様にわざと見せない、あるいは「まだ届いていません」としらを切るケースです。デジタル化が進んだ現代でも、FAXや紙文化が残る不動産業界では、このような力技が通用してしまう闇があります。
なぜ「現金客」が最強の武器になるのか
優先順位が逆転する際、決まって使われる魔法の言葉が「現金一括」です。
住宅ローンを利用する場合、契約から決済までには「ローン特約(審査に落ちたら白紙撤回)」という不確定要素が伴います。
売主様にとって、これはリスクです。
物元業者はここを突きます。
「一番手はローンですが、二番手(自社の客)は現金です。確実なのは二番手ですよ」と。
たとえ一番手のあなたが先に手を挙げていても、業者のサイフ事情(両手狙い)と売主の安心(確実性)が合致した瞬間、あなたの優先順位はゴミ箱に捨てられてしまうのです。
行政書士の視点:この「不和」をどう防ぐべきか
このようなドロドロした業界の論理に、一般の方が丸腰で立ち向かうのは非常に困難です。
私が「和をもって貴しとなす」と掲げているのは、こうした「情報の非対称性」から生まれる悲劇をなくしたいからです。
あなたが理想の物件を逃さないために、以下の「防衛策」を徹底してください。
住宅ローンの事前審査は、物件を探す「前」に完了させる
「事前審査通過済み・回答書あり」という状態は、物元業者にとって「潰しにくい一番手」になります。審査の不透明さを理由に後回しにされるリスクを最小限に抑えられます。
「物元業者」を見極め、時には直接アプローチする
特定の物件がどうしても欲しい場合、その物件の窓口(物元)を突き止め、直接問い合わせるのも一つの戦術です。
自分が「両手の客」になれば、業者は全力であなたを守ります。
ただし、その場合は業者が「あなたの味方」ではなく「売主との調整役」になるため、契約を急がされるなどが不利になるリスクも併せ持ちます。
セカンドオピニオンとして行政書士を活用する
仲介業者の説明に「何かおかしい」と感じたら、利害関係のない第三者に相談してください。
私は法務のプロとして、その取引に不自然な点がないか、業者が自己の利益のために情報を操作していないかを、中立の立場でチェックします。
結び:誠実な「縁」を結ぶために
不動産取引は、何千万円という大金が動く「人生の大きな節目」です。
そこに業者のエゴや不透明な力学が入り込む余地があってはなりません。
一番手で申し込んだのに買えなかった――その悔しさは、単に物件を逃したこと以上に、人間不信や業界への不信感という深い傷を残します。
横浜市中区の行政書士相澤和久事務所では、そんな不動産取引の闇に光を当て、誰もが納得し、安心して「和」のある契約を結べるよう日々邁進しております。
「この買付、本当に一番手として通るかな?」
「業者の対応に納得がいかない」
そう思われたら、契約書に判を押す前に、ぜひ一度お立ち寄りください。
「和をもって貴しとなす」。
あなたの誠実な想いが、正当な報いを受け、最高の住まいと結ばれることを、心より願っております。


