行政書士の相澤和久です。
近年、「おひとりさま相続」に関するご相談が増えています。
おひとりさまとは、未婚の方に限らず、配偶者と死別して一人暮らしになった方も含まれます。
そうした方が亡くなった場合、自宅がどうなるのか?というのは非常に重要な問題です。
特に、事実婚のパートナーがいる場合、自宅に住み続けられるのかどうかは、残された人の生活に直結します。
このコラムでは、自宅が「賃貸か持家か」によって異なる取り扱いや、事実婚パートナーに住まいを引き継がせる方法について詳しく解説します。
自宅が賃貸か持家かで対応が大きく変わる
結論からいうと、次のようになります:
住宅の種類 | 事実婚パートナーが住み続けられる? |
賃貸住宅 | 可能(条件あり) |
持家 | 原則、困難(遺言があれば可能) |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
賃貸住宅の場合:引き続き住める可能性が高い
賃貸住宅(=不動産賃借権)は相続可能な権利です。
よって、おひとりさまに相続人がいれば、相続人が契約を引き継ぎ、事実婚パートナーがそのまま住み続けられる可能性があります。
さらに、相続人がいない場合でも、民法には「事実上夫婦と同様の関係にあった者」は、不動産賃借権を承継できるという決まりがあります。
つまり、実質的に夫婦として暮らしていたパートナーであれば、住み続けられる可能性は比較的高いといえるでしょう。
持家だった場合:遺言がなければ引き継ぎは難しい
一方、自宅が持家だった場合、話はまったく異なります。
事実婚のパートナーは相続人ではないため、自宅の所有権を得ることはできません。
つまり、遺言がなければ、住んでいた家の所有権は相続人(兄弟や甥姪など)に移ります。
そして、所有権を得た相続人の理解が得られなければ、パートナーは退去を求められる可能性が高いでしょう。
これを防ぐには、遺言書を作成しておくことが不可欠です。
誰が相続人になるの?順位と分け方を知っておこう
遺産(自宅を含む)は、遺言がない場合は民法に従って相続されます。
具体的には、法定相続人が遺産を引き継ぐということです。
相続人の順位
- 子ども
- 親(直系尊属)
- 兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪が代襲相続)
子ども・親もいない場合、兄弟や甥・姪が相続人になります。
事実婚のパートナーは相続人ではありません。
なお、相続人に順位については別のコラムで詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
財産の分け方は?
法定相続分により、たとえば兄弟が2人いれば、それぞれが2分の1ずつの権利を持ちます。
ただし実際には、「どの財産を誰がもらうか」を遺産分割協議で決めなければなりません。
この協議は相続人全員の合意が必要です。
1人でも納得しなければ分割は成立しません。
なお、遺産分割協議についても別のコラムで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
遺言の力は絶大。「遺言があると、どうなる?」
遺言がある場合、その内容が優先されます。
つまり、法定相続人に一切財産を渡さず、「事実婚パートナーに自宅を遺す」といった指定も可能です。
例えばこんな指定が可能になります。
- 「自宅は〇〇に遺贈する」
- 「預金の半分をパートナーに贈る」
- 「相続人には〇〇だけを与える」
自分の意思をしっかり残したいなら、遺言は最も確実な方法といえます。
なぜ誰にも譲るつもりがなくても遺言が必要なのか?
「別に誰にも財産を渡さなくていいし、遺言はいらない」と思う方もいるかもしれません。
しかし、遺言がないと、相続人間での争いが起こりやすくなります。
たとえば:
- 兄弟が高齢で意思表示できない
- 相続人が多数いて、連絡も取れない
- 甥・姪との関係が疎遠
こうなると、遺産分割協議が進まず、自宅の管理(税金や清掃など)だけが相続人にのしかかる事態にもなり得ます。
まとめ:事実婚パートナーのために、遺言をのこそう
おひとりさまが亡くなったとき、自宅の扱いは大きな課題になります。
- 賃貸住宅であれば、住み続けられる可能性は高い
- 持家の場合は、遺言がないと事実婚パートナーに引き継ぐことは難しい
だからこそ、自分の意思を明確に伝える遺言の作成が重要です。
自分で書くのが不安な方は専門家に相談を
遺言書には形式上の厳格なルールがあるため、ご自身で書くことを躊躇されている方も少なくありません。
当事務所では、おひとりさまや事実婚カップルのための遺言・相続対策について、丁寧にサポートしております。
「今から準備しておきたい」「何をどう書けばいいのかわからない」
そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。