私は大学卒業後、サラリーマンとしての勤務を経て開業をしました。

開業して最も苦しんだ(苦しんでいる)のはお客様からの苦情、いわゆるクレーム対応です。
サラリーマンの頃も多くのクレーム対応を行ってきましたが、心理的なプレッシャーは比べようもなく今の方が大きいです。
(サラリーマンのときは、クレームは他人事と感じて仕事をしていたのです)

人によってクレームに強い・弱いという特徴があるのであれば、私は間違いなくクレームに弱いです。

それもあって、クレームが出たときのために、「あのとき説明しましたよね?」と言えるような証拠を残すことも必要ではないかと考えたときもありました。

普段の仕事の中で、頻繁にクレームが発生することはまずありません。

それなのに、自分を守るためだけに余計な手間を増やすことが必要なのかどうか考えたとき、適度な落としどころを見つけて進めるようにしました。

私の仕事柄、郵送物が多いこと、お客様と対面より電話をすることが多いことから、これらを漏らさずに履歴を残すことにしています。

電話の内容を全て記録するのではなく、概要を残すだけなので手間はかかりません。
郵送についても同様に、配達記録が残らないものも含めて全て送付日、送付先の概要などを記録しています。

一方で、お客様との面談の都度、面談記録を作成してサインをもらうというようなことはしておりません。

ある金融機関の住宅ローン相談に同席した際、金融機関の営業担当者が社内ルールということで面談記録を作成しているのをみたことがあります。

そこまでする必要はないかな、と思っています。

余談ですが、履歴を付け始めて気づいたことは、お客様や受任した業務内容によって報告頻度にバラツキがあるということでした。
そこからは意識して回数が少ないお客様には報告を増やすことにしています。

なお、記録はNotionという無料アプリを利用しています。パッとみて分かりやすいことから、大変重宝しております。

これらはあくまでクレームが起きたときにどう説明するか、という準備であると思っています。

それより大事なのは、そもそもクレームが起きないような仕事の進め方を構築しなければならないということ。

一番多いクレームの内容は「報告がない。仕事が進んでいるのか分からない」ということだと聞いたことがあります。


これを聞いて、どう思われるでしょうか?



士業の側からみて、「最初にきっちり説明したし、次のステップに移る際には連絡を入れてるのに、おかしいな…」と思う人もいるでしょう。

お客様からみた「報告がない」というのは次のステップに移る際の途中報告だけでは少ないと言いたいのだと思われます。

話は変わりますが、不動産会社がお客様から売却の依頼を受けたら、週に1度の報告義務があります(専属専任媒介契約の場合)。
毎週、書面やメールで販売活動状況を報告するわけです。

たとえ、販売活動をして問い合わせも物件のご案内もなくても、「何もありませんでした」という報告をします。

実際に報告をする営業担当として、これはかなりのプレッシャーになります(私の体験です)。
何もありませんでした、という報告をしつづけるのは苦しいのです。
そのため、「こんなことをやっています」「周辺の物件で売れた物件はありません」など、何かしたお客様の役に立つ情報を盛り込んで、何とか報告を続けるのです。

それと比べてみても、1か月に1度も報告をしない、業務の進捗をしないというのではクレームになっても致し方ありません。

単純に、報告回数と頻度を増やすだけでもクレーム件数は減るでしょう。
また、報告が少ない士業が多いことから、しっかり報告をするだけで「親切でまめに連絡をくれる行政書士さん」と思ってもらえます。
そして、報告するためにも業務の進捗を整理して、常に完了までの見通しを立てる癖がつきます。

報告の回数・頻度を増やすことによって普段の仕事量が増えることを嫌う人もいるかもしれませんが、クレームに繋がってしまい、それを挽回する労力と比較すれば、仕事量が増えるとは言えないと思います。

もしかしたら、クレームに強い人であれば、クレームが起きたときに何とかしてやる!と考えるかもしれません。

私はクレームに弱いので、クレームに繋がらないようにしよう、と考えて普段の仕事を組み立てています。

士業を開業されたばかりの方など、お仕事の参考になれば幸いです。