【不動産売買】契約後に「やっぱりやめたい!」と思ったら?契約解除のルールとペナルティを解説
行政書士の相澤和久です。

中古住宅の購入にあたって、一度に全額のお金を支払い、物件の引き渡しを受けることもできます。
契約・決済(引き渡し)を同日に行うことから、契約後に気が変わって契約解除するということはありません。

一方、一般的に不動産を購入する場合、まずは契約を結び、その証として買主から売主に手付金を支払います。

その後、買主は住宅ローンの手続きを進めて、その融資金で残代金を支払うこととなります。

この場合、契約締結(手付金支払い)から、残代金の支払いまでは1~2か月かかるため、その間に売主または買主の気持ちが変わり契約解除となることもあります。

その理由はさまざまです。

住宅ローンが通らなかった、他に魅力的な物件が見つかった、家族の事情が変わった……。

不動産売買では契約後でも解除が可能なケースはあり、ペナルティや返金ルールがしっかりと決まっているのが特徴です。

この記事では、不動産購入契約の「解除」について、代表的な4つのケースと注意点をわかりやすく解説します。

理由を問わず解除できる「手付解除」とは?

契約締結時に手付金の支払いをすることが一般的です。
そして、売買契約書の中では、手付金を解約手付として扱うことが決められています。
つまり、契約時に支払う「手付金」は、契約をキャンセルするための“解約手付”とすることを合意したことになるのです。

解約手付とは?

  • 買主が解除したい場合 → 支払った手付金を放棄すれば解除可能
  • 売主が解除したい場合 → 受け取った手付金の2倍を買主に返金すれば解除可能
たとえば手付金が500万円なら、
  • 買主は500万円を放棄すれば契約解除OK
  • 売主はもらった500万を返すと同時に500万を上乗せして、合計1,000万円(倍返し)を買主に支払えば契約解除OK
これは、理由を問わず解除できる代わりに、金銭的なペナルティが発生する仕組みです。

手付解除には期限がある

契約書には「令和〇年〇月〇日までに限り、手付解除できる」といった文言が記載されています。

一般的には契約日から1か月以内が目安です。

この期間を過ぎると、手付解除はできなくなります。

なお、手付金の金額は当事者の合意で決められますが、あまり少額(10万)だと手付解除しやすくなり契約が不安定となります。
それもあって、手付金の金額は売買価格の5-10%程度を目安に決めます。

手付金が気になる方は、詳しく解説したコラムがありますのでぜひご覧ください。

自然災害などで契約履行が困難になった場合

契約後に地震や火災などの不可抗力によって建物が壊れてしまった場合、買主はお金を支払わなければならないのでしょうか?

答えはNO。

大地震などの自然災害は当事者の責任ではないこともあり、多くの売買契約書には以下のような取り組めをしています。
天災地変その他売主又は買主のいずれの責めにも帰すことのできない事由によって、本物件が滅失し売主がこれを引渡すことができなくなったときは、買主は売買代金の支払いを拒むことができ、売主又は買主はこの契約を解除することができる。
前項によってこの契約が解除された場合、売主は、受領済の金員を無利息で遅滞なく買主に返還しなければならない。
この場合、手付金も全額返金されます。

つまり、ペナルティなしで契約解除ができるのです。

一方、損傷が軽微で修繕可能な場合は、売主が修繕してから引き渡すという対応になります。

約束を守らなかった場合は違約解除(違約金)

売買契約では、売主と買主それぞれに約束事(義務:やるべきこと)があります。

単純にいえば
  • 売主の義務:物件を期日までに引き渡すこと(=引越し完了含む)
  • 買主の義務:残代金を期日までに支払うこと
相手方が約束を守らないとは、買主が約束の期日になったのにお金を払ってくれないことや、売主が約束の期日になっても引っ越しをして出て行ってくれない、ということです。

これらを履行しないと「契約違反(債務不履行)」となり、相手は契約解除&違約金請求が可能になります。

違約金の金額は?

多くの契約では、売買代金の10〜20%が違約金として定められています。

たとえば:
  • 売買代金5,000万円
  • 手付金250万円(支払い済み)
  • 違約金は10%(=500万円)
もし、買主が契約違反をした場合は手付金の返金はされず、追加で250万を支払うことになります。
(手付金250万と追加の250万の合計で違約金500万)

売主が契約違反をした場合は手付金の返金(250万)と同時に違約金500万の合計750万の支払いが必要です。

住宅ローンが否決された場合は「ローン特約」でペナルティなし!

契約時点では事前審査に通っていても、本審査で住宅ローンが否決されることがあります。

その場合でも買主は売主に対して期日までに残代金を支払うことを約束していますので、このままではお金が支払えず、契約違反による解除・違約金を請求されてしまいます。

このリスクに備えるのが「住宅ローン特約」です。

ローン特約とは?

住宅ローンが否決されたときに限って、買主はペナルティなしで契約を解除することができます。

一般的には下の条件を満たせば、手付金返還・ペナルティなしで契約解除が可能です:
  1. 指定した金融機関に本申込を行った
  2. 期限内にローンが否決または減額された
  3. 故意に否決されるような行為(書類の遅延、虚偽申告など)をしていない
この特約は買主が住宅ローンを利用して購入する場合には必ず契約書に記載されます。

買主の立場で考えると、「住宅ローンが否決されても支払った手付金が返ってくるなら安心だ」と思って売買契約を結ぶことができます。

ただし、ローン特約にも注意すべきことがあります。

ローン特約の注意点

  • 事前審査時よりも実行時の金利が上がったなどの「条件変更」は解除理由にならない
  • ローン特約で指定した金融機関以外は否決されても、契約解除はできない(指定した金融機関で否決されたときのみ適用)
ローン特約による契約解除はノーペナルティのため、買主に有利な特約です。

本来、自分の都合で契約解除をする場合は手付解約となりますが、それでは手付金が返ってきません。
住宅ローンが否決されれば手付金が返ってくる、ということで意図的に否決されるようにすることを思い付く人もいるようです。

必要な書類をなかなか提出しない、年収を低く申告するなど、本来あるべき申込手続きとは異なることをしても、ローンが否決されさえすれば契約解除できるわけではありません。

その他の特約で契約解除できる場合もある

買主・売主が合意すれば、契約書に特別条項(特約)として解除条件を記載できます。

代表的なものを2つ紹介します。

買い替え特約

「自宅が売れなかった場合、購入契約を解除できる」とする条項。

売却代金で購入する予定の人にとって重要です。

空渡し特約

「賃借人が退去しなかった場合、契約解除できる」とする条項。

投資用物件や賃貸中物件の取引で使われることがあります。

それぞれの特約を入れる際にペナルティを設けるのか、ノ―ペナルティとするのか、期限を設けるのかどうかは当事者の取り決め次第です。

契約解除は「当事者間の合意とルール」がすべて

契約解除には、原則として「契約書の内容」がすべてです。

あとから「やっぱりやめたい」と思っても、条件を満たさないと手付金が戻らなかったり、違約金を請求されたりします。

また、契約書に決められた通り、速やかに手付金を返してもらえるか、違約金を支払ってもらえるかは分かりません。
不動産会社は「仲介者」であり、返金交渉や裁判手続きを代行してくれることもないです。

疑問がある場合は、契約前にしっかり確認しておくことが大切です。

契約前後の「不安」や「疑問」、専門家に相談しませんか?

当事務所では、不動産売買に関する契約書の確認・手付金や違約金の扱いについてのご相談を承っております。

「住宅ローン特約が心配」「ペナルティを避けたい」「契約解除になったらどうなる?」など、気になる点を事前にクリアにしましょう。