ファイナンシャルプランナー・行政書士の相澤和久です。
中古マンションを購入する際、価格や立地に加えて「地震に強いかどうか」も重要な判断材料です。特に1981年(昭和56年)以前に建築された「旧耐震基準」のマンションでは、構造的な安全性をしっかり確認する必要があります。
この記事では、耐震診断の義務があるマンションの種類、耐震診断結果の見方、そして「Is値(構造耐震指標)」の重要性について解説します。
耐震診断が義務付けられているマンションとは?
耐震診断が法律上義務付けられているのは、以下の2つのタイプの建物です。
① 要緊急安全確認大規模建築物
病院、店舗、旅館など不特定多数が利用する大規模な建物、および災害対応に必要な官公署などが該当します。
② 要安全確認計画記載建築物
自治体が「避難路」(緊急輸送道路等)と指定した道路に面し、かつ1981年5月以前に着工された一定の高さ以上の建物です。
これらに該当する建物は、耐震診断を実施し、その結果を所管の自治体がホームページで公表しています。
自治体のホームページで公開されている診断結果の読み方
耐震診断が義務化されている建物の診断結果は、自治体によって以下の3段階で評価されます。
Ⅰ:倒壊する危険性が高い
Ⅱ:倒壊する危険性がある
Ⅲ:倒壊する危険性が低い
Ⅰ・Ⅱは、原則として新耐震基準を満たしていない建物です。
また、結果報告書の中で、今後の対応について記載されている場合もあります。
なお、建物が新耐震基準に適合している場合にはマンションエントランスに下記のシールが貼られているので一目で分かります。(自治体によって異なります)
公開情報の注意点
たとえば神奈川県では、横浜市や川崎市など政令市は各市のサイトで、それ以外の市町村は県のホームページで公表されています。東京都も建物の規模などによって「都」または「区」が担当しており、両方のページを確認するのが確実です。
一般的な中古マンションの多くは「努力義務」
上記のようなケースを除き、多くの中古マンションでは、耐震診断は努力義務にとどまっています。
つまり、診断を実施しているかどうかは物件ごとに異なり、公表もされていないケースがほとんどです。
そのため、購入を検討する際には、仲介会社や管理会社に確認する必要があります。
管理会社に確認すべきポイント
耐震診断の義務がないマンションでも、独自に診断を行っているケースがあります。
この場合、管理会社が耐震診断結果報告書を保管していることがあります。
不動産売買時には、重要事項説明書に耐震診断の有無が記載されますが、検討段階で知りたい場合は仲介会社を通じて管理会社に確認してもらいましょう。
専門家が注目する「Is値」とは?
耐震診断結果の中で、最も重要な数値が「Is値(構造耐震指標)」です。
これは建物が地震動に対してどの程度耐えられるかを数値化したものです。
Is値の目安
- 0.6以上:新耐震基準に適合
- 0.6未満:旧耐震基準の可能性が高い
- 0.3未満:大地震時に倒壊のリスクが非常に高い
特に、すべての階でIs値が0.6以上であるかどうかが、新耐震基準に適合しているかの判断基準になります。
1フロアでも0.6未満であれば、旧耐震の扱いとなり、住宅ローンや税制優遇に影響が出る可能性があります。
耐震性が資産価値と住宅ローンに与える影響
一部の金融機関では、以下のような制限を設けている場合があります:
- Is値が0.3未満のマンションには融資しない
- 耐震診断が義務であるにも関わらず未実施の場合、融資不可
つまり、現時点で居住に問題がないと思っていても、将来の売却時に買主が住宅ローンを使えないことで、資産価値が大きく下落する可能性があります。
まとめ:耐震診断とIs値は「安心」と「資産性」を守るカギ
- 耐震診断が義務なのは一部の大規模・沿道建築物のみ
- 多くの中古マンションでは耐震診断は未実施
- 管理会社や仲介業者を通じて診断結果を確認可能
- Is値0.6以上が新耐震基準の目安、0.3未満は特に注意
- 資産価値や住宅ローン審査に影響するため、事前確認が重要
中古マンションの購入は、単なる「住まい選び」ではなく、将来にわたる資産形成の一環でもあります。耐震性という観点からも、安全と資産価値を守るための冷静な判断が求められます。
自分自身が良いかどうかという視点とは別に、他の物件と比較した時、買主にとってこのマンション・部屋の魅力は何のか?という視点も必要です。
数多くの中古マンションを見てきたプロの目から見たアドバイスを提供しておりますので、中古マンション購入にあたって資産価値を気にされている方はぜひご相談ください。