どうなるの?令和4年からの住宅ローン控除~令和4年度税制改正大綱~

本日、令和4年度税制改正大綱が公表されました。

少し前から住宅ローン控除については縮小する方向で検討されていることが報道されていたため改正大綱の内容については大きな驚きはなかったのではないでしょうか。

控除率が0.7%(現行は1%)に縮小されたこと、適用対象者の所得要件が課税所得2,000万以下(現行は3,000万以下)に引き下げられたことは大きく報道されているのでご存知の方も多いでしょう。

一方で、細かな点で令和3年度と異なる箇所も見受けられます。特に中古住宅には大きな変更点ではないかと思われる点も少なくありません。

そこで、本稿では中古住宅に影響があると思われる点を中心に解説していきます。

1.令和4年度税制改正の基本的な考え方

大綱で明記されている通り「消費税率引き上げに伴う反動減対策」から「住宅性能に応じた減税措置」に考え方が変わっています。

令和3年度までは取得住宅が消費税課税か非課税かによって、その内容が大きく異なっていました。中古住宅であっても課税物件、つまり宅建業者が売主の物件は新築物件と同様に大きな住宅ローン控除枠がありました。しかし、令和4年度以降については消費税の課税、非課税の区分けではなく、住宅の性能による区分けに変わっていること注意が必要です。

どのように変わっているのか、以下で詳しく見ていきます。

2.控除率0.7%、借入限度額3,000万、期間13年の要件

優良住宅以外の場合、令和4年、5年に入居を開始した場合、控除率は0.7%(現行1%)、借入限度額3,000万(現行4,000万)控除期間13年(現行非課税10年、課税13年)となります。そして、この控除を受けられる住宅の要件が大きく変更されています。それは消費税の課税、非課税の区分けではない、ということです。

大綱によると、

「住宅の取得等が居住用の新築、居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得又は宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋の取得である場合の金額等であり、それ以外の場合(既存住宅の取得又は住宅の増改築等)における借入限度額は一律2,000万と、控除期間は一律10年とする」

とあります。

中古住宅で考えると、宅建業者が売主(課税)かどうかではなく、宅建業者が一定の増改築等を行っていること、が要件になっています。

この、「一定の増改築」がどのようなものかは明記されていません。しかし、現行では一定の増改築の有無にかかわらず宅建業者が売主というだけでよかったものが、一定の増改築を求められるということは、適用要件が厳しくなったと言えます。

なお、令和4年度以降も、現行の非課税の中古住宅と同様に一般の中古住宅は2,000万、10年となるようです(控除率は0.7%)。

中古住宅の取引で考えると、現行では課税物件(最大13年、480万)であったものが、既存住宅(最大10年、140万)になってしまう可能性がある、ということです。

一定の増改築、がどのようなものを指すのかが今後のポイントになりそうです。

3.床面積40㎡以上、50㎡未満の場合の適用要件

現行では課税物件が対象でした。それでは、令和4年度からはどうなるのでしょうか?

大綱によると

「令和5年12月31日以前に建築確認を受けたものの新築、又は当該家屋で建築後使用されたことのないものの取得についても、本特例の適用ができることとする。…以下省略」

とあります。

この文面を読む限り、中古住宅では適用の余地がないようです。「宅建業者が一定の増改築…」、という文言がないことからも、現行のように宅建業者が売主であっても50㎡未満の中古住宅は住宅ローンの適用除外となります。この点は中古住宅では大きな影響がありそうです。

4.築年数要件の撤廃

現行ではマンション(耐火建築物)は築25年以内、その他は築20年以内という要件があります。令和4年度からは築年数要件が撤廃されます。

そして、新耐震基準に適合しているということが要件に加えられます。なお、登記簿上、昭和57年1月1日以降の家屋は新耐震基準とみなします。

大きな変更点のように見えますが、中古住宅においては現行と同等の要件であると言えます。

それは、現行でも建築年数が経過しているものについては新耐震基準に適合している証明書を提出することで住宅ローン控除の対象となっていること、また新耐震基準に適合している証明書の発行自体、建築確認申請が昭和56年6月1日以降であれば取得が容易であるためです。

消費者のメリットとして、新耐震基準に適合している証明書の発行費用がかからない、という点はあげられますが。

5.まとめ

中古住宅において、消費税の課税の有無で住宅ローン控除の内容は大きく異なっていました。それが具体的にどのような要件に変更されるのかがポイントになりそうです。

また、本稿では詳しく書きませんでしたが、優良住宅については一般住宅に比べて優遇措置がありますので、その具体的な要件についても注目です。